2016年3月29日更新

勇者ホシオークションの冒険

俺は、億ションホシオだ。
今日も新宿は行きつけの小さな安酒場で、タコわさをつまみに焼酎をすすっていると、隣に座る一人の乙女がうなだれているのに気付いた。あたりは花見だ新学期だと賑やかなのに、いつまでたっても顔を上げない彼女を見かねて、声をかけてみることに。

天空の王国ラプンツララ

4月のある日の出来事

―どうしたんだいお嬢ちゃん?泣いているのかい?

俺が話しかけると、彼女は面をあげてこちらを真っ直ぐに見つめる。今までに出会ったことの無いような美しい女性だった。

―ああ優しい人、どうかわたしをお助けください。

こんな美人に頼みごとをされて、無下に断れるようなやつは男じゃない。俺は即座にうなずくと彼女に話を続けさせた。

―わたしは天空の王国ラプンツララの王女セラリル。わたしの王国は闇の悪魔メタマーナに支配され、国王である父が囚われの身に・・・。どうかわたしたちの国を救ってください!

人気アニメを組み合わせたような王国の名前に正直戸惑ったが、女の涙と鬼ころしには滅法弱い俺だ。すぐに「俺にまかせろーーーい!」と叫んでいた。

ここで、セラリルの言うことにゃ、をまとめてみた。

王女セラリルの言い分(要点まとめ)

a, 天空の王国ラプンツララは900年も続く平和な王国で、地球の上を誰にも気付かれずに漂っている
b, 最近、闇の悪魔メタマーナの軍団がやってきて支配するようになった(やっぱり暖冬の影響とか)
c, 悪魔の軍団は女性用アクセサリーが大好物らしく、王国のアクセサリーは全部取り上げられてしまった
d, 王女セラリルは独身
e, 天空の王国ラプンツララへ行くには、ある日決まった駅で電車を降りるとそこにもう王国があるという寸法らしい

なるほど、なんとも眉唾な話だが、人生こんなこともきっとあるんだろう。俺は「早速帰って準備をするからまた旅立ちの日に会おう」と告げて、酒場を出ることにした。

―ありがとう勇者ホシオークション!ちょうど一週間後、朝一番の井の頭線で五つ目の駅で降りてください・・。そこが天空の王国ラプンツララです!

「井の頭線で五つ目の駅」ってなんかすっげーフォークソングの香りがする!長○剛センパイの匂いがする!とは思いながらも、必ず助けにいくからな(だって独身の美人女性が困っているんだし!)と約束して、俺は家に戻った。

冒険の準備をしなくちゃ

家に帰って熱海土産の梅こぶ茶をすすりながら、さっきまでの出来事を振り返る。まるで嘘みたいな話だが、俺は実際にあの美しい王女セラリルをこの目で見たのだ。あの憂いを帯びた表情が嘘だったとは到底思えない。

しかし、安請け合いをしてしまったものの、何を準備していいのやら・・。気付けば王国ラプンツララの広さも、気候も、何もかも分からない。文明は発達しているんだろうか。大体何泊くらいになるのかなあ、3泊4日くらい?と勝手にあたりをつけて、とりあえずモバオクで旅行グッズを調べてみることにする。

旅行グッズ

うん、これは役立ちそうなものが沢山出品されている。「やっぱりキャリーのついた頑丈なスーツケースが必要よねー」「携帯の充電もなー電圧とかって大丈夫なのかしら、っていうか電波入るのかな?」などと、漠然と調べているだけでも購入を検討すべきものがザクザク。

勇者ホシオークションが選ぶ、旅立ちにマストな便利アイテム!

キャリーバッグ
これは絶対必要でしょう。5000円以下で買えちゃうのもあるみたいだし!

アメニティ
忘れがちだけど持っていたいのがこうしたアメニティグッズ。洗顔、歯ブラシ、美容グッズなどなど、美女と行動を共にするなら気をつけていたいところだ。

自動給餌器
何日も家をあけるのにペットのゴールデン(金魚:オス)はどうしたらいいんだ!そんな時に目にとまったのがこの自動給餌器。これでしばらく家を空けてもゴールデンがエンゼルフィッシュにならなくて済むというわけだ。

トレッキングシューズ
これ、ふつーに重要でしょう。靴。冒険なのでおそらくは徒歩メインになるだろう。ものすごい文明が発達してて楽チンに大ボスのところまでたどり着けるかもしれないが、まあ一応履いておいて損はない。

必見!悪魔を倒す方法

「ん、まてよ?大ボス?」ここで俺は大変なことに気付いた。相手は悪魔だと言ってたよな・・しかもただの悪魔じゃない、闇の悪魔メタマーナなんだよな・・。悪魔ってどうやって倒したらいいんだろうか。

とりあえず引き続き、モバオクで悪魔に関する出品を調べてみる。

悪魔

「悪魔」に関する多数の出品があるが、そのかなりの部分を「小悪魔ギャル」系の商品が占めている!これを王女セラリルが着ているところを想像すると多少ムフフとなるが、それは本来の目的ではない。うーむ、困った。

生まれてこのかた、ナマの悪魔など一度も見たことの無い俺だったが、天空の王国ラプンツララを救うためにはその悪魔をどうしたってやっつけないといけないのだ。王女セラリルの言葉を思い出す。

―闇の悪魔メタマーナは40代くらいの人間の男の姿をしています。
―彼は典型的な悪魔なので十字架を苦手としています。
―女性用アクセサリーが大好物なので、珍しいアクセサリーの中に十字架を紛れ込ませて彼に迫れば、きっと打ち倒すことができるでしょう。

そうだった!必要なのは女性用の十字架アクセサリーだ!しかしそんなものってモバオクで購入できるのだろうか・・

十字架アクセサリー

たっくさんありました。

こうして俺は必要なものを見つけ出すと、入札競争にも勝ち(こんなこと悪魔に打ち勝つことにくらべたら造作もないことだ)全てを出発の日までに手に入れる段取りをつけた。

旅立ちを待つ日々も俺は仕事に行き、事情を知らないモバ美とオク子に白い目で見られながらも、しばらくの休みを取ることに成功した。「なんなんですか急に」との問いかけにはただ「困ってるやつがいたら助けるのが俺ってもんだろ?」と答えた。

例の酒場にも何度か行ってみたが、もうあの女性は現れなかった。店の主人に聞いても、そんな客は覚えていないという。「ホシオちゃん、酔っ払ってたんじゃないのぉ?」と馬鹿にしたような馴染の常連客に背を向け、俺はついに明日天空の王国ラプンツララに旅立つのだ。去り際に「探さないでくれ」と言い残したが、誰も聞いていなかった。

そして旅立ちへ

ついにその朝がきた。
必要なものは全て、モバオクで買ったキャリーバッグの中に詰め込んである。服もなるべく冒険に相応しいものを探しだしておいた。うむ、我ながらキマっている。

王女セラリルの話だと、朝一番の電車で目的の駅に到着しないといけない。井の頭線の渋谷始発に乗るため、渋谷駅まではタクシーを使って到着。「こんなに静かなスクランブル交差点はあったかな・・」もしかしたらもう2度と見ることができない渋谷の光景に若干感傷的になりながらも、俺はしっかりと歩みを進めて、5時ちょうどの井の頭線始発に乗り込んだ。

思えば平凡な人生だったが、嫌いじゃなかった。特に秀でたものがあるわけじゃない俺だが、何の因果か運命のいたずらか、選ばれし勇者ホシオークションとして悪魔を倒しにいくのだ。きっと平凡な人生とはお別れすることになるだろう。もし俺がいなくなった時、モバ美とオク子は大丈夫だろうか?あいつらに沢山迷惑をかけてしまうかも知れないな・・でも仕方ない!

こんなことをボーっと考えていると、電車はいよいよ5番目の駅に到着しようとしていた。「ゴクリ」人の居ない車両内に唾を飲みこむ音が響きわたる。

「ただいま新代田」

車内の電光掲示板に到着を知らせる表示。いよいよである。意を決してホームに降り立つと、一見普段と変わらなそうな駅構内の雰囲気。駅名表示板にもしっかりと「新代田」と書いてある。

「あれ、おかしいな。改札でたらそこが天空の王国ラプンツララかな?」こう考えた俺はゆっくりと階段を上っていく。まさにこれが天国への階段だわ、ってことで今度こそいよいよだ!

足早に自動改札を通り、目の前に広がっていたここが天空の王国だぁとこの目に飛び込んできた光景は!

・・・

いつもどおりの環七通りでした。

そこで、気付いちゃったんだよねー俺。

あの王女セラリルに出会った日って、エイプリルフールの日だったんです。

時刻は5時12分。

うん、今日は帰ってもう一回寝るよ。明日から普通に会社行くよ・・・。


以上、編集長億ションホシオが、エイプリルフールに騙されたよっていうお話でした。
この話が嘘か本当かは、うーんどうでしょう!

しかし、モバオクに出品されている商品たちに嘘はありません!
いざ悪魔と戦うことになってしまった時、きっとあなたの探しているものが見つかるはず!

さて、今年もまたエイプリルフールがやってきます。
嘘をつくのであれば、なるべく誰かがハッピーになるような嘘をつきたいものですね。

それでは皆さん、良い嘘、良い冒険に是非チャレンジしてみてください!